2022年10月1日から、火災保険の最長契約期間が10年から5年に短縮されることをご存じでしょうか。
これから火災保険を新規契約する人も、近く満期を迎える人も、支払うべき保険料にかかわる重要な制度改正です。
そこで本記事では、以下のポイントについてご紹介します。
これまで、火災保険の最長契約期間であった10年契約が、2022年10月1日以降廃止されることになりました。
火災保険料は、契約期間が長いほど割引率が大きくなるため、10年契約は保険料の節約法として有効でした。
しかし、今回の改定で10年契約が廃止。火災保険の最長期間は5年へと引き下げられました。
契約期間が短くなると割引率は小さくなるため、実質的な値上げといえるでしょう。
また、火災保険料を算定する基準となっている「火災保険参考純率」も同時期に改定。
全国平均で10.9%の引き上げが見込まれています。
まとめると、2022年10月1日以降の火災保険料は、最長契約期間が5年に短縮されることによる実質的な値上げ。
併せて「火災保険参考純率」の改定によるダブルパンチが消費者を悩ませる事態となりそうです。
これから火災保険料に新規加入しようと思っていた人、もしくは契約満期により再加入しようと思っていた人にとって、10年契約の廃止は手痛い制度変更です。
納得できる理由が知りたいという人も多いでしょう。
そこでここからは、なぜこのタイミングで10年契約がなくなることになったのか。その理由を解説します。
近年、日本では「数十年に一度」級の自然災害が頻発しており、それに伴って保険会社の支払い保険金額も膨れ上がっています。
保険会社の想定を超える保険金の支払いが続いた場合、保険料を上げなければ保険商品の提供は困難となります。
そのセオリーどおり、「火災保険参考純率」の改定で保険料は上昇。
さらに、最長契約期間を短くすることで割引率を縮小し、収支の改善を図ることが、10年契約がなくなる要因のひとつです。
損害保険料率算出機構が公表している、2017〜2020年における風水災の支払い保険金をみてみると、莫大な保険金の支払いが毎年発生していることがわかります。
年度 | 主な風水災 | 支払保険金(火災保険) |
---|---|---|
2017年度 | 平成29年台風18号 | 300億 |
平成29年台風21号 | 1,078億円 | |
2018年度 | 平成30年7月豪雨 | 1,520億円 |
平成30年台風21号 | 9,202億円 | |
平成30年台風24号 | 2,856億円 | |
2019年度 | 令和元年台風15号 | 4,244億円 |
令和元年10月25日の大雨 | 155億円 | |
2020年度 | 令和2年7月豪雨 | 848億円 |
令和2年台風10号 | 932億円 |
特に、2018年度と2019年度においては、ともに1兆円を超える莫大な保険金が支払われ、保険会社の収支を圧迫。
2020年においても2000億円に迫る勢いであり、保険料を上げなければ火災保険制度自体の存続が危うい状況です。
しかし、今後も起こり得る大規模災害に備えるために、火災保険制度は必要不可欠。
保険料の値上げは家計に響きますが、しょうがない出費だと割り切るほかありません。
前述したとおり、大規模災害の頻発により2022年の10月1日から、火災保険が以下のように変わります。
保険料と支払保険金の収支バランスが崩れているのなら保険料を上げればいい話で、最長契約期間を短縮する必要があるのか疑問に思いませんか?
これには、最長契約の短縮には割引額を小さくする以外にも、「長期的な災害リスクの不透明さに備える」という目的があるのです。
今回のように、火災保険料を上げるためには「火災保険参考純率」の改定が行われますが、火災保険料アップの影響を受けるのは、今から火災保険に入る人だけです。
たとえば、昨年に10年契約を結んでいる場合、残り9年間は当時の保険料を払うだけで構いません。
つまり、契約期間が長いほど、保険料の改定が保険会社の収支に反映されにくい仕組みになっています。
これを解消するために、最長保険期間を10年から5年に短縮。保険料改定の反映を早くすることで、収支の改善を図ることが狙いです。
逆に考えると、「保険期間が長いままだと保険会社が大きく損をする可能性がある」という判断をしたといえます。
つまり、これからも大規模災害が増え続けることに備えた制度改正だといえるのです。
火災保険の最長契約期間が10年から5年に短縮されることで、実質的な火災保険料の値上げとなります。
火災保険の加入が必須の人は多く、この制度変更は家計へ大きなダメージを与えるでしょう。そこで、保険料を抑えるコツをご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
すでに本文中で触れましたが、火災保険は長期で契約するほど割引率が大きくなります。
2022年10月1日から、最長契約期間が10年から5年へ縮小されたことにより割引率も縮小。実質的に火災保険料の値上げとなりました。
近く契約満期を迎える人やこれから新規契約する人には手痛い制度改正ですが、後述する方法を駆使して賢く保険料を節約しましょう。
火災保険には、保険料を安く抑えるためのコツがいくつかあるためご紹介します。火災保険の内容を適切に見直し、無駄な支出を抑えましょう。
また、この知識は契約更新のたびに役に立つもの。頭の片隅にでも置いておくと、家計の役に立ち続けるでしょう。
火災保険の補償内容とは、どんなときに保険金が支払われるかを示したもの。補償内容を幅広く設定しておけば、補償が手厚く安心ではありますが、その分保険料は割高になってしまいます。
そのため、本当に必要な補償だけを残し、補償内容を絞ることで保険料を抑えることができます。
一例として、マンションの高層階に住んでいたり高台の一戸建てに住んでいたりする場合、浸水の可能性が低いため、水災補償の優先順位は低くなるでしょう。
ほかにも、マンションの最上階や一戸建てに住んでいる場合、上階からの水漏れ補償を付ける必要はありません。
火災保険にはさまざまな種類の補償を付帯することができますが、あれもこれも付けていては保険料が高額になりがち。
上記のように、補償内容を一つひとつ精査して「この補償は本当に我が家に必要なのか」をじっくり考えてみてください。
なお、前述したような「必要な補償だけを残していく方法」を実践する場合は、補償内容を自由にカスタマイズできる商品でなければなりません。
そのため、なるべく火災保険料を抑えたいのなら、「自由にカスタマイズできる商品か」を確認することを最優先させるべきです。
家財の保険金額は、個人の実情に応じて契約者が自由に調整できる場合がほとんど。家財保険金額を今よりも低く設定することで、保険料を安く抑えることができます。
家財保険の場合、今ある家財を全て買い直せるだけの保険金は必ずしも必要ではありません。
なぜなら、必要最低限の家財さえあれば、とりあえず生活はできるからです。
家財は建物とは違って、契約者の実情に応じて保険金額を調整することができます。
そのため、保険金額を必要最小限に設定することで、火災保険料を抑えることができるのです。
たとえば、今ある家財を全て買い直せる保険金額ではなく、最低限の家具や家電を揃えられるだけの保険金額を設定します。
最低限の家財さえあれば、生活への支障は少ないですし、そうすることで保険料も最小限に抑えることができるのです。
火災保険では、保険期間が長いほど、また支払いをまとめるほど割引率が大きくなります。
今回、最長保険期間が10年から5年に短縮されたため、保険料を抑えたいのなら、必ず最長の5年契約を結びましょう。
長く住むことがわかっていれば、当然5年契約を選ぶ人が多いですが、「5年間も住む確証がない」という人もいるでしょう。
実は、そのような人も最長の5年契約を選ぶ方が、保険料は割安。
なぜなら、火災保険を途中解約した場合、未経過分の保険料はすべて返還されるからです。
そのため、滞在期間が不透明な場合でも、とりあえず最長契約を結ぶことが、もっとも保険料を抑える方法だといえます。
また、月払いや年払いよりも一括払いにすることで、さらに保険料の割引率が大きくなります。
余裕がある人は、なるべくまとめて支払いを行いましょう。
火災保険に限った話ではありませんが、大きな買い物をする場合、1社からの見積もりで即決してしまうのはおすすめしません。
1社だけではなく複数社から見積もりをとることで、大体の相場感が掴めます。
1社だけの見積もりでは、それが高いのか安いのか判断するのが難しいのです。
特に、火災保険においては各保険会社で料金が大きく異なるので、複数社から見積もりをとるのは必須といえるでしょう。
さらに、各保険会社独自の補償などもあるため、より自身に適した保険が見つかるというメリットもあります。
1社ずつ見積もりをとるのが面倒だと感じる人は、一括比較サイト等を利用するとよいでしょう。
まずは、現在加入中の火災保険の補償内容を確認してみることから始めましょう。
なぜなら、実際に住んでみると「我が家にこの補償はいらないな」と、リスクに対するイメージが付いているはずだからです。
さらに、「我が家にはどんな補償が付いているか」を再確認することで、万が一の際の請求漏れを防ぐことができます。
仮に、火災によって自宅が全焼してしまったとしても、残酷ですがローンが免除されることはありません。
住宅ローンを組んでいる人は、当然住めなくなった家のローンもきっちり返済しなければならないのです。
人間住む場所はどうしても必要なので、り災後は賃貸物件に移るか自宅を再建築することが想定されますが、そうなると元々の住宅ローンに加えて二重の支払いが続くことになります。
実家に住ませてもらうなどの選択肢があれば、最悪の状況は回避できますが、それでも経済的ダメージと精神的ストレスは相当なものでしょう。
火災保険にさえ入っていれば、火災保険金を修繕費や再建築費に充てたり、住宅ローンの返済に充てたりすることができるのです。
多額の住宅ローンが残っているという人は、火災保険への加入は絶対条件といえるでしょう。
火災保険料の値上げがあろうとも、「火災保険に入らない」という選択肢はないので、保険内容を見直し保険料を抑えるのが賢い対処法です。
既に“10年契約”などの長期で契約している場合は、今から保険を乗り換えても最長で5年契約までしか結べません。
そのため、今のまま解約することなく、満期まで契約を継続した方がお得な可能性が高いでしょう。
一方で、1年契約などの短期契約をしている場合は、保険会社や補償内容を見直したり、5年契約の一括払いにしたりすることで、今よりも保険料が安くなる可能性があります。
いずれの場合も、いまの保険料と新たに見積もった保険料を比べてみないことにはわかりません。
見積もりだけなら無料なので、一括比較サイトなどでシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
これから火災保険に加入する人は、本記事で紹介した「火災保険料を安くするコツ」を実践しましょう。
特に、新築の家に住み始める場合、あれもこれもと補償を付けてしまいがち。「本当に必要か?」と落ち着いて吟味することが大切です。
火災保険にはいろんな種類の補償を付帯させることができるため、ついつい優先度の低い補償まで付けてしまいがち。
人生には何が起こるかわからないため、付けておいて無駄な補償はなく、何より強い安心感は得られるでしょう。
しかし、明らかに起こりそうにないリスクに備えるために、大きな保険料を支払うのは単純にもったいないです。
不必要な補償は外し、本当に必要な補償だけを残すよう心がけるのが、保険料を安く抑えるコツです。
火災保険における最長契約期間の短縮による実質的な値上げは、近年の大規模災害の数を考えると致し方ないといえます。
多くの人の家計がダメージを受けることになりますが、火災保険は人生に必要な保険のひとつです。
本記事で紹介した火災保険料を抑える方法を駆使して、今回の値上げへの対策を行いましょう。