賃貸住宅の場合、自分の所有物件じゃないのに火災保険に入る必要はあるのかと疑問に思ったことはないでしょうか。 結論としては、入居者の過失による破損には大家さんに対する損害賠償責任が発生するため、賃貸住宅であっても火災保険は絶対に必要です。 本記事では、賃貸住宅でも火災保険が必要な理由や必要な補償、家財保険の目安や保険料を抑えるポイントについて解説しています。
火災保険は自分の財産を守るためのものというイメージが強いため、賃貸住宅に住んでいる場合は不要なのではないかと疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、結論としては賃貸住宅に住んでいても火災保険への加入は必要です。いえ、むしろ持ち家よりも確実に保険を掛けて備えておかなければなりません。
その理由をわかりやすく解説します。
賃貸住宅に住む上で火災保険に加入する場合、最低限必要な補償は以下の3つです。
詳しくは後述しますが、「家財保険」は自分の財産を守るため、「借家人賠償責任補償」は大家さんへの損害賠償費用を補償してもらうため、また「個人賠償責任補償」は隣家への損害賠償費用を補償してもらうために必要なので、火災保険加入時には必ず付帯させておきましょう。
とはいえ、賃貸住宅向けの火災保険プランには、上記3つの補償が自動付帯されていることがほとんどなのでご安心ください。
逆に言えば、上記3つ以外の補償は必須ではないので、無理に他の特約を付帯する必要はありません。
特約は付ければ付けるほど補償は厚くなりますが、その分掛け金も高くなるので本当に必要な補償かどうか見極めることが大切です。
日本には失火法という法律があり、自分の家の火災が原因で隣家の家財等に損害を与えてしまったとしても、損害賠償責任は発生しないことが決められています。
そのため、自分の財産には自分で保険を掛けておかなければ、もしものことがあった際に誰も損害を補償してくれません。
ただし、合わせて知っておかなければならないのは、損害賠償責任が免除されるのは、あくまでも火災による損害だけということです。
例えば、お風呂の水を止め忘れて階下の部屋を水浸しにしてしまった場合や、ガス爆発を起こしてしまった場合などは失火法の対象外なので、被害者への損害賠償責任が発生します。
このような火災以外の原因による隣家への損害賠償責任においては、火災保険に「個人賠償責任補償特約」を付帯することで備えることが可能です。
賃貸の入居者には、原状回復義務といって入居中における過失や事故による破損を修繕する責任があります。
賃貸住宅の退去時に壁紙の修繕料を請求されたりするのは、入居者が原状回復義務を負っているからなのです。
火災の場合も同じで、過失や事故によって火災を引き起こし、建物を破損させてしまった場合は修繕費を負担しなければなりません。
しかし、当然ながら火災による損害額は大きくなりがちで、一般人がすぐに用意できる金額ではないことがほとんどでしょう。
だから、火災による大家さんへの損害賠償額を補償してもらうために、火災保険に加入しておかなければならないのです。
また、前述したとおり隣家が火元の火災から自身の財産を守るためには、自身で家財保険に加入しておくしかありません。
さらに、火災以外の原因で隣家に損害を与えてしまった場合には失火法が適用されず損害賠償責任が発生するため、火災保険に「個人賠償責任補償」を付帯することで備えます。
家具や家電、衣類などにおける家財の損害を補償してくれる家財保険は、自分で保険金額を設定できる場合が多く、保険金額を低く設定すれば当然ながら保険料は安くなります。 しかし、自宅にある家財の総額を把握するのは難しく、家財保険をいくらぐらいに設定すればいいのかわからないという人もいるでしょう。 そこで家財保険の目安と保険料を抑えるポイントについて紹介します。
家財保険の目安は家族構成や年齢によって変わるので、以下に保険金額の目安表を用意しています。
なお、以下の目安表はあくまでも一例なので、各世帯の実態に合わせて調整をお願いします。
家族構成 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | |
---|---|---|---|---|---|---|
世帯主の年齢 |
〜29歳 | 300万円 | 500万円 | 600万円 | 700万円 | 800万円 |
30歳代 | 300万円 | 700万円 | 800万円 | 900万円 | 1,000万円 | |
40歳〜 | 300万円 | 1,000万円 | 1,200万円 | 1,300万円 | 1,400万円 |
前述した家財保険の目安を参考に、ぜひ保険金額を調整してみてください。
保険金額を小さくすることができれば、火災保険料をいくらか抑えることができます。
実際に家財保険の設定金額で保険料にどれだけの差が生まれるかシミュレーションした結果がこちらです。
家財保険金額 | 300万円 | 700万円 | 1,000万円 | 1,300万円 | 1,600万円 |
---|---|---|---|---|---|
保険料(1年) | 7,190円 | 13,830円 | 18,770円 | 23,880円 | 28,980円 |
※東京都のマンションスリムタイプで試算
参照:[損保ジャパン](https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/habitation/earthquake/)
家財保険の設定金額で変動する保険料の差は、決して無視できるほど小さくないことがお分かりいただけるでしょう。
ちなみに、家財保険金額を実態よりも多く設定しておいて、実際に火災が起きた時にたくさん火災保険金を貰おうと考える人がいますが、その作戦は通用しません。
なぜなら、火災・家財保険の請求手続きが行われた際には、保険会社の調査員が現地調査を行い実際の損害額を算定するからです。
なので、実態とかけ離れた保険金額を設定していたとしても、保険金は実際の損害額の分だけしか出ることはないので、支払った保険料が無駄になってしまいます。
家財保険は、適切に設定し無駄な保険料を支払わなくていいよう努めましょう。
火災保険に加入する際、同時に入るべきか悩む人が多いのが地震保険です。
ローン支払い中の持ち家の場合は、迷わず地震保険への加入を推奨しますが、賃貸住宅の場合は悩むところです。
なぜなら、地震による破損の場合は入居者が建物の修繕費用を負担する必要がないからです。
賃貸住宅の入居者が地震保険に加入することで補償の対象となるのは家財だけなのです。
その家財も地震による保険金の上限は家財保険の設定金額の半分となっています。
例えば、家財保険の設定金額を300万円に設定しているときに、地震によって家財が全損になったとしましょう。
すると家財保険300万円の半分なので、保険金は150万円しか貰えません。
以下は、家財保険300万円、地震保険(家財)150万円の地震保険料の目安です。150万円でもないよりはマシですが、東京の場合で年間3,500円程度の保険料が上乗せされてしまいます。
北海道 | 青森県 | 岩手県 | 宮城県 | 秋田県 | 山形県 |
---|---|---|---|---|---|
670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,060円~1,770円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 |
福島県 | 茨城県 | 栃木県 | 群馬県 | 埼玉県 | 千葉県 |
870円~1,460円 | 1,590円~2,660円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,840円~3,060円 | 2,480円~4,130円 |
東京都 | 神奈川県 | 新潟県 | 富山県 | 石川県 | 福井県 |
2,480円~4,130円 | 2,480円~4,130円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円1,110円 |
山梨県 | 長野県 | 岐阜県 | 静岡県 | 愛知県 | 三重県 |
1,060円~1,770円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 2,480円~4,130円 | 1,060円~1,770円 | 1,060円~1,770円 |
滋賀県 | 京都府 | 大阪府 | 兵庫県 | 奈良県 | 和歌山県 |
670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,060円~1,770円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,060円~1,770円 |
島根県 | 島根県 | 岡山県 | 広島県 | 山口県 | 香川県 |
670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,060円~1,770円 |
愛媛県 | 高知県 | 徳島県 | 福岡県 | 長崎県 | 熊本県 |
1,060円~1,770円 | 1,590円~2,660円 | 1,590円~2,660円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 |
大分県 | 宮崎県 | 鹿児島県 | 佐賀県 | 沖縄県 | |
1,060円~1,770円 | 1,060円~1,770円 | 670円~1,110円 | 670円~1,110円 | 1,060円~1,770円 |
参照:[損保ジャパン](http://web.sjnk.jp/kasai/simulation/index.html)
家財保険300万円、地震保険(家財)150万円は一人暮らし世帯の家財保険金額の目安です。
よって賃貸住宅の場合、十分な貯蓄がある人にとっては地震保険の必要性は低いかもしれません。
ちなみに、2021年度のデータによると火災保険に地震保険を付帯している人の割合は69.0%となっています。
参照:[損害保険料率算出機構](https://www.giroj.or.jp/databank/earthquake.html#horizontalTab1)
また、地震保険料は国が決めているので保険会社によって保険料に違いはありません。そのため、地震保険に加入する場合でも火災保険の条件だけを見て比較すればよいのです。
結論から言うと、不動産会社指定の火災保険よりネット型の火災保険の方がお得な場合が多いです。
大前提として、販売員が常駐している代理店型保険は、人件費や店舗を維持するための経費が掛かっている分、それらが掛からないネット型保険に比べて保険料が割高に設定されています。
そして、不動産会社が指定している火災保険は、代理店型保険であることが多いです。
よって、ほとんどの場合で不動産会社指定の火災保険よりネット型の火災保険の方がお得でしょう。
もしも、すでに不動産会社指定の割高な火災保険に加入してしまったという人は、ネット型の火災保険に乗り換えることも可能です。
火災保険は最低1年単位で契約を結びますが、満期を迎えずに途中で解約したとしても未経過分の保険料は返還されます。
そのため、割高な火災保険はなるべく早く解約し、安い火災保険に乗り換えることで無駄な保険料を節約することができるのです。
入居時に不動産会社からの指定がなければ最初からネット型保険に、指定があった場合は一旦指定の火災保険に加入したのち、なるべく早く安い保険会社へ乗り換える方法をおすすめします。
前述したとおり、賃貸住宅における火災保険で最低限必要な補償は以下の3つです。
その人にもよりますが、上記3つ以外の補償は付いていなくても罹災後の生活に困窮する可能性は低いと思われます。
相手方への補償と家財一式が揃えられる保険金さえ貰えれば、新たな入居先で生活の基盤を作ることは十分可能でしょう。
また、ぜひ確認していただきたいのが「個人賠償責任補償」についてです。
これは、自動車保険などでも特約として付帯されていることが多いのですが、火災保険と重複して入っていても保険料の無駄になります。
火災保険に付帯されている場合も自動車保険に付帯されている場合も、どちらも補償内容は同じです。
一度火災保険と自動車保険の補償内容を確認し重複していれば、どちらかを外すことで無駄な保険料を払う必要がなくなります。
賃貸住宅とは、自分の所有物件ではないため過失により破損させてしまった場合には損害賠償責任が発生します。
だからこそ、持ち家よりも余計に火災保険の必要性は高いと言えるでしょう。
賃貸住宅に住む際の火災保険で最低限必要な補償は以下の3つで、保険料を抑えるにはこれら以外の補償を外すことが手っ取り早いです。
また、ネット型の保険会社へ乗り換えたり、家財保険の設定金額を見直したりすることでも保険料を抑えることができるとご紹介しました。
実際にどのくらい保険料が変わるのかについては本文で詳しく解説しているので、是非じっくり目を通してください。